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もしかしてスマートフォンがどこにも繋がらないのは、ここが超ド田舎だからかと千勢は思った。
その時、小声で通信をしていたはずのニーロが素っ頓狂な声をあげた。
「はぁ? 特定できないってなんだよ。──でも、今まではけっこう早く割り出せていただろう。──俺に引き取れって? やだよ」
自分のことでもめているようだ、と千勢はすぐにわかった。
カールにそっと話しかける。
「もしかしたら、もう少しお世話になるかもしれません……」
「ああ、それはかまわないよ。気にしなくていい」
「そうよ。何ならうちの娘になってもいいのよ」
唐突に背後からかかった声に、千勢もカールも飛び上がった。
二人がドキドキする心臓を押さえて振り返ると、カールの妻のマリサがニコニコしながら立っていた。
「びっくりさせてごめんなさいね。でも、私も驚いたのよ。お隣さんから帰って来たら当局の人がいるんだもの」
お隣さんと言っても、約二キロほど離れている。
「ああ。どうやらチセが帰れそうなんだが……そううまくはいかなさそうでな」
「そうみたいね」
イライラと舌打ちしながら通信を終えたらしいニーロの様子に、千勢は不安を隠せない。
千勢達に向き直ったニーロはマリサがいることに一瞬目を丸くさせたが、すぐに用件を切り出した。
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