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そう言うと陽向は右手を差し出した。
「今日から友達」
「ともだち……?」
友達なんていつ以来だろう。叶人と話せるようになってからは、叶人だけが友達だった。仲良かった子達はみんな離れていって、男子にも気持ち悪いって。
中学でも友達になりたいなんて言ってくれる人はいなかったのに、この人は私が猫と話せても友達になってくれるの?
「……猫と話せると思ってるんでしょ?」
「うん」
「そんな人と友達に?」
「俺はなりたい。吉川さんともっと仲良くなりたいよ」
“吉川さんともっと仲良くなりたいよ”
ああ、ダメだ。やられた。
「……市ノ瀬くんって変わってるね」
「そうかな? 普通だと思うけど」
「……いいよ。友達」
「え?」
朱里はゆっくり手を上げると、差し出された陽向の右手の指先を軽く握った。
「友達になる」
「本当!?」
こくりと頷くのを見て、陽向は朱里の右手をしっかりと握り返した。驚き顔を上げると、嬉しそうに笑う陽向の顔にまたなぜか顔が熱くなった。
胸が熱いのはなぜだろう。友達なんて言われて嬉しいからかな。それとも握り返されたその手がとても温かくて、その熱が移ったからかな。
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