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空の上
はるか眼下に、小さくなっていく聖都が見える。聖なる河ボアンの中州に位置する都には無数に水路が走り、郊外の大きな水路には巨大な水車がいくつも回っていた。
竜の背の上から、リアンノンはほぅっと感嘆のため息をついてその光景を眺めている。巨大な水路は鉱石を研磨するために設けられたものだ。水車のそばには大きな研磨工場がいくつも設けられており、水の力を借りて鉱石たちを美しい姿へと変えていく。
リアンノンが作り終えたばかりの司祭の回顧録は、ここで研磨された鉱石竜の鱗を使用しているのだ。その鉱石たちを採掘しているヴィアン鉱山へとリアンノンたちは向かおうとしていた。
権力者の権威の象徴ともいえる鉱石が、リアンノンはあまり好きではない。けれど、巨大な運河をゆったりと回る水車を見るのは大好きだ。嫌なことがあるとリアンノンはいつも都の郊外に行っては、飽きることなく黄昏の光に抱かれた巨大な水車たちを眺めていた。
「凄いね。あんなの動かしちゃうなんて。僕のパパはここで亡くなったんだね……」
玻璃の眼を細め、鉱石竜が悲しげに声をはっする。
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