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空の上
鉱石竜の言葉に、貧救院で人知れずなくなった鉱夫に想いを馳せる。彼は鉱山の落盤事故で足に大怪我を負い、それが原因で働けなくなったというのだ。どうやってこの鉱石竜と鉱夫が出会ったのか、彼らがどんな生活を送っていたのかリアンノンにはわからない。
けれど、竜と話しているとまるでその場に亡くなった鉱夫がいるような気持にリアンノンはなる。彼が生きて、竜を通じて自分に何かを伝えようとしているかのように。
「ねぇ、あなたのパパは――」
「パーシヴァル。僕の名前はパーシヴァルだよ、リアンノンっ!」
リアンノンの言葉は鉱石竜の弾んだ声によって遮られる。リアンノンは息を吸って、もう一度彼に語りかけた。
「パーシヴァルはどうやってパパと出会ったの? その、竜は……」
そっとリアンノンは、パーシヴァルの背に広がる鱗へと眼を落としていた。陽光の輝きを受けて、乳白色の鱗は七色に輝いている。その光景は、まるで真珠が輝いているようだ。
竜の鱗はこの世でもっとも高貴なものの一つに喩えられ、古くから装飾などに好んで用いられた。近年では鉱石の加工技術と共にその需要も高まり、竜の乱獲が一部の国では問題になっているほどだ。
その影響か、近年では野生の竜を目撃することすら難しい。
「うん、僕のママは人間たちに殺された。でも、そんな僕をパパが救ってくれたんだ……」
パーシヴァルの言葉に、リアンノンは顔をあげる。彼は懐かしむように眼を細め、言葉をつづけた。
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