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鉱石竜
「パパの人生は、こんなんじゃなーい!!」
咆哮と共に、竜の罵声がリアンノンに浴びせられる。幸いなことといったら、彼が大理石の檻に入れられ、鎖で両足を拘束されていることだろう。お陰で彼は自分のもとへは来られないし、自分の隣で得意げな笑みを浮かべる男にかぶりつくこともできない。
聖堂教会の中心に当たる中央聖堂にやってきたリアンノンを待っていたのは、檻に入れられた鉱石竜と、そんな竜を得意げに見つめる聖王だった。
乳白色の鱗で全身を覆われた竜は、リアンノンを見るやいなや先ほどの罵声を浴びせてきたのだ。そんなリアンノンの前で、彼は大きな翡翠の眼から涙を流し始めた。
「聖王様に頼んでパパの回顧録を読ませてもらったけど、なにこれひどいよ! パパの生涯を時系列別に並べただけじゃないか。こんなの精霊王様が読んでも、パパがどんな人間だったのかわかりっこないっ! 書き直してっ!!」
初めて鉱石竜をみたリアンノンだが、竜が泣くなんて話は聞いたことがない。立て続けに起こる信じられない現象に、頭が混乱する。
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