5.スカウトマンは大体が怪しい奴

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   そういや俺、あの術を使ったのって大抵戦闘慣れしてる人達と一緒の時だけだったから、他の人からの反応とか考えた事なかったな。  これにはブラックもキョトンとしたようで、トルベールの言葉に目を(しばたた)かせている。  そっか……ブラックは言うなれば大魔術師みたいなもんだから、俺がどんな巨大な術を出そうが「それくらいが普通」とか思っちゃってたんだな。  だってブラックも術自体も桁違いの威力だったし。  って事は俺って実は結構凄いのか。  妙な所で驚いている俺に構わず、ブラックが(いぶか)しげな顔でトルベールに近付く。 「お前、何が言いたい?」 「まあまあ、そうキナキナしなさんな。アンタらの返答次第では、私もちょっとは融通を効かせても良いと言ってるんですよ。私もこの一帯の管理者ですからね~、実際損をするより得する方がいいし、そうなりゃ勝ち負けなんて関係ねえ」  融通を聞かせても良いって……もしかして、交換条件を付けて来る気か?  悪党がこういう事を言い出す時って、大抵とんでもない条件を出して来たりするし、あんまり喜べないな。  トルベールの真意を(うかが)うように黙り込む俺達に、相手は溜息を吐いた。 「警戒するな……って言う方が無理か。じゃあこうしよう。負けたアンタらには、俺……私に付いて来て貰おうか。それでチャラってコトで」 「……何か企んでるんじゃないだろうね」 「企んでないと言ったらウソになるかなァ。ま、今ノりにノってるお店を嫌々潰すより、アンタらにコナ掛けた方が得だって判断しただけさ」  なんだかいう事が商売人っぽい。  まあそりゃ商会の人間なんだから当たり前なんだろうが、チャラ男な風貌の相手からこんな言葉を聞くと、妙な違和感があるな。まるでヤリ手の社長みたいだ。  ヘンに諦めが良い所もかなり怪しかったが、俺達には付いて行く以外の選択肢はない。  約束をしたなら従わねばならない。  それがこの世界の唯一のルールみたいなもんだ。  だから、俺もブラックも大人しくチャラ男の後ろを付いて行くしかなかった。 「くっ……一生の不覚だ……」  背中まで軽薄そうな雰囲気のトルベールを睨み付けながら、ブラックがふらふらとした足取りで歩く。それを支えてやりつつ、俺は相手の肩を慰めるように叩いてやった。悔しかろうが、こうなっては仕方ない。  
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