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そんな俺を見ながら、ブラックは剣の手入れをしながら言葉を返す。
「ま、急いでも仕方ないさ。裏社会ってのは、一般人がおいそれと覗けないから裏社会なんだ。三日程度で部外者に見つけられたんじゃ、相手の面目丸つぶれだし」
「索敵でもムリなのか? 地下や隠し部屋に人がいるかどうか見たりとか」
「僕なら出来ない事も無いけど……ほら、街って障壁が張ってあるだろう? アレのせいで索敵の精度が落ちるから、あんまりオススメはしないな。……そもそも、索敵は地下に対しては無効になるし、地下にジャハナムがあったらお手上げだ」
索敵ってそんな縛りあったのか。
バリアのせいで精度が落ちるって、もしかしてモンスター避けのバリアって電波をジャミングして妨害する役割もしてるとか……いや、査術って電波なの?
いや、まあ、今それはどうでもいい。
とにかく、索敵でもジャハナムと通じる場所を探るのは無理ってことね。
でも、索敵が使えなくてもブラックはネット小説で言う所の【鑑定】を使えるんだから、会う人間に片っ端から鑑定を使っていけば……って、それも無謀か。
うーん、八方塞だな、こりゃ。
「あークサクサするぅ……」
「そんなに言うなら、また噂を振り撒きがてら酒場に行ってみる?」
「酒場ねえ……」
そう呟いて、俺は有る事を思い出した。
「そうだ……獣人達の店はどうなってんだろ」
パルティア島で色々あって忘れてたけど、あれから二週間以上経過してる。もうそろそろ色んな結果が出ている時期のはずだ。
俺はあくまでもアドバイス程度の存在だったから、店の運営に関してはみんなの好きに変えても良いとトーリスさん《牛耳美青年》には言っておいたが、なんだか心配になって来た。
二週間も経ってるなら、もうあそこでチューされたのも忘れられてるよな?
俺の事を覚えてる通行人なんて、いないよな?
「心配なら、行ってみる? 迷ってても仕方ないし」
無精ひげをぞりぞりと指で撫でながら、ブラックが首を傾げる。
心配は心配だが、行くか迷ってるのはお前のせいなんですけどね。
そう言いたいのをぐっと堪えて、俺は鷹揚に頷いた。
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