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5.スカウトマンは大体が怪しい奴
嘘、やばい。
俺達が負けちゃってどうすんのよ。用心棒を買って出たってのに!
地面に尻もちを突いて青ざめる俺を、トルベールが笑いながら見下している。
いっそ強襲を仕掛けようかと思ったが、体が動かない。この男相手では勝つのは無理だろうと、俺はどこかで覚っていた。
……そう、こいつは強い。
体力や腕力の事ではない。
この男は、獣人達が最も嫌う「狡賢い」という強さがある。
ズルとは言うが、それもまた立派な力だ。大体、本当の戦闘はこっちの出方を待ってくれるようなターン制じゃないんだ。ましてや、正々堂々がモットーの天下一武闘会でもない。なら、何を使おうが勝てばいいのだ。
ってことは、俺達には何の文句も言えない訳で。
「くっそ……ごめん、ブラック……」
なんにせよ、負けたのは俺のせいだ。
ブラックは膝をついただけで倒れちゃいない。
俺があっさり倒されなければ……。
「まあ、そう落ちこみなさんな」
そう言いつつ、勝者のトルベールは余裕の笑みで葉巻を咥える。
チャラ男に葉巻なんて生意気だ、思わず顔を顰めた俺に、トルベールは笑った。
「んじゃまあ、俺……おっと、私が勝ったと言う事で、獣人達を追い出そっかな~……と思ったんだ、けども! 君達を見て気が変わった」
「……は?」
「どういう……ことだ……」
ふらふらしながら立ち上がるブラックに、トルベールは顔を向けて肩を竦める。
「どういう事もこういう事もさあ、兄さん……ブラックって言ったか。アンタ街中だからって手加減してただろ? あの盾を発火させる炎なんて、普通じゃねぇよ。あれってば、結構本気の術だったんだぜ? 他の術に干渉できる術なんて、等級が高くなきゃできっこねぇ。それにキミ、さらっとやってたけどさあ、あの大規模なメッサー・ブラットは異常だぜ」
「え……そうなの?」
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