放免祝い 1

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「燈理の後をつけてきたんだよな。じゃなきゃここまでたどり着くわけがない。東京なんか来てどうするつもりだ。おまえ都会には興味なかったのに」 「冷てえなあ。おまえに会いに来たに決まってるだろ。どこにいるのか誰も教えてくれねえし。おれがなにかしたのかねー」  そこまではまだわかる。言い訳としては上等だ。そりゃあ夏になれば旅行のひとつでもするついで、旧友に会いたくもなるだろう。それでも小学生と同じリュックを背負ってくる理由にはならない。  悠平は佐輔が投げた方のリュックを掴み上げた。 「これはなんだって訊いてる」 「おい、そっちは燈理のだぞ」 「は? こっちがおまえのだろ」 「そっちは燈理のだ」 「ふざけんなそこまで耄碌してるか。目の前で見てたんだ」  悠平は構わずリュックのジッパーを引き開ける――と、なかには替えの服や申し訳程度のお菓子が入っていた。目についたタオルをつかみ出すと、 「あー、それわたしの。勝手に開けないでよ、おにいちゃん!」  なんで、 「悠平、人様のカバンを勝手に開けるなんて、マナーがなってねえぞ。燈理もデリカシーのかけらもない奴を兄にもつと大変だな」     
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