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「燈理の後をつけてきたんだよな。じゃなきゃここまでたどり着くわけがない。東京なんか来てどうするつもりだ。おまえ都会には興味なかったのに」
「冷てえなあ。おまえに会いに来たに決まってるだろ。どこにいるのか誰も教えてくれねえし。おれがなにかしたのかねー」
そこまではまだわかる。言い訳としては上等だ。そりゃあ夏になれば旅行のひとつでもするついで、旧友に会いたくもなるだろう。それでも小学生と同じリュックを背負ってくる理由にはならない。
悠平は佐輔が投げた方のリュックを掴み上げた。
「これはなんだって訊いてる」
「おい、そっちは燈理のだぞ」
「は? こっちがおまえのだろ」
「そっちは燈理のだ」
「ふざけんなそこまで耄碌してるか。目の前で見てたんだ」
悠平は構わずリュックのジッパーを引き開ける――と、なかには替えの服や申し訳程度のお菓子が入っていた。目についたタオルをつかみ出すと、
「あー、それわたしの。勝手に開けないでよ、おにいちゃん!」
なんで、
「悠平、人様のカバンを勝手に開けるなんて、マナーがなってねえぞ。燈理もデリカシーのかけらもない奴を兄にもつと大変だな」
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