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最高に愉快ないたずらだって顔をして佐輔は笑っている。
数秒前に置いたカバンを見間違うなんて、そんな馬鹿な話はない。悠平はもうひとつのリュックのジッパーを開けた。佐輔も止めはしなかった。
上に乗せられている丸めたタオルを取り上げる。
「なっ、」
リュックのなかにはA4サイズの茶封筒が目一杯に膨らんだものが三つ入っていた。
触ってみる。
押したら押した分だけ柔らかい感触が返ってくる。持ち上げようと掴んで見れば、中身は粉状であるとすぐにわかった。封筒のなかにはビニールとサランラップで包まれた白い粉末状の物質が詰まっている。しまった、と思う。
すぐに手を離してリュックを捨てた。
つい手が伸びて佐輔の胸ぐらを掴んだ。
「おまえ、なんてもん持ってきてんだ。つーか、これ燈理に運ばせたな」
どこかで燈理のリュックとすり替えて、運び屋代わりに使ったのか。人を食ったところは前からあるが、やっていいことの一線を大幅に超えている。こいつのことを嫌いだと言う連中の気持ちが今はよくわかる。
怯むどころかより愉快そうに笑って、佐輔は答えた。
「自分が取り違えただけだろ。人のせいにすんな」
「ちょっと、喧嘩はやめてよう」
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