葬式当日

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葬式当日

結局、息子は耐えきれず癇癪を起こしてしまった。 葬式中、会場脇に飾られた花を触ろうとし、慌てて止めたら火がついてしまった。 とりあえず、控え室に二人で退散。 戻ると聞かない息子。 戻ったら触っちゃいけないし、騒いだりしてはいけないんだと説明するも、それは出来ないの一点張りで私は頭を抱えてしまった。 既に焼香は終わり、皆花を棺桶に入れるクライマックス。 すまん、爺さん………私はここで見送らせていただくよ………。 号泣する息子に、思わずため息が。 そこへパタパタとヒールの音。 マイコさんだ。 「火葬場に行くからバスに乗る準備して。息子君はクールダウンさせないとならないから一旦、セイユちゃんは離れた方がいいわよ」 「出発……?うちの両親は…?」 「もう霊柩車に乗ったわよ」 マイコさんがこなかったら、私置いていかれるとこだったよ! すぐに荷物をまとめてバスに乗る。 「わーいバスだ〜。マイコおばちゃん乗ろう!」 「じゃあレンジさんの荷物持ってくれる?」 「うん。車椅子の人、最後に乗って最初に降りる?」 「そうねぇ。出入口に近い方がいいかもねぇ!」 その頃には息子の機嫌も治っていた。 助かったな………。 両親も祖母も霊柩車だ。 私の隣にレンジさんが座る。 はぁ〜。あと少しの辛抱だ!! レンジさんが突然口を開く。 「モモ姉さんはね。お嬢様なんかじゃないんだよ。 君のお爺さんが、お嬢様にしちゃったんだ。 何もしないからね。彼はさせようともしなかったし、自分で動く人だったからね。 何もしない姉さんを周囲の人間に見られる度に、そう設定つけて説明してたんだよ。 モモ姉さんがどんな人かなんて、僕らが一番知ってるよ」 そう、吐き捨てるように話し出した。 「確かにうちは裕福な家庭だった。けれど、皆それぞれ自立したよ。マイコさんは保母になったし、エミさんも店を持って……上手くいかなくても必死で生きてる。 それに比べて………。 セイユちゃん、お母さん(母)にも言ったけど、もうしばらく祖母の面倒、よろしくお願いします」 そう言い、マイコさん、レンジさん、エミさんは深々と頭を下げるのだった。 え………?怖っ!? なにかの罠っ?! 「お爺さんはまぁ、私たちからは言えなかったけど。姉さんを施設に入れるってなれば、私たち背中を押すからね。 それに、案外離れた方がお互いいい最後を迎えられることもあるのよ。姉さんには理解するように何度でも話すからさ」 でもこれが本音だとしたら………祖母はなんか不幸せな人だなと思う。 心が。乏しい。原因に自分で気付けない。 火葬場は町外れ。 天気は晴天。 広い駐車場。 焼いてるあいだは暇になるので、後で辺りを散策しようと息子と約束し、再び祖父の遺体と対面。 昔、私の恩師が言っていたよ。 「葬式ってのはやだねぇ〜病室でしくしく泣いて、一旦身体浄めに退室させて、また霊安室でご対面してそこでまたしくしく泣いてさ〜。何回泣かすんだよって。悪意を感じるよ〜」 結局泣かなかったな私。 「爺ちゃんどうするの?」 「骨にしてお墓に入れてあげるんだよ」 「焼くの?」 「そうだよ。でももうお空にいるから熱くないよ!こうすると早く天国に行けるんだよ」 「………ふーん」 もう、祖父の顔は見納めになるんだな。 でっかいオーブンがエレベーターみたいなデザインになってて、そこで最後のお経をあげていただく。 坊さんがお経をあげたすぐ後ろに、同居していた私たち家族が立つ。 息子も異様な光景に流石に手を繋いだまま固まっていた。 息子が大人しいこともあって、少しほっとした………その瞬間!! 「うぅっ………うっうっ」 私。 号泣。 だって今まで泣く暇なかったんだもん! 息子とどう乗り切るかしか頭になくて。 ちょーっと大人しくしてたら、急にこれが最後だと思ってしまって。 「うえぇえ!……くっ、ぅぅぅぅ!」 止まらなくなった。 そんな私の姿を見て。 全員ドン引き!! 急に泣いたからね! 葬式とかケロッとしてたのに! しかも、祖父母と仲が悪いことなんてここにいる全員が知ってるわけ。 両親共に横目で呆然と私を見る。 『泣くんかい!』って。 「ふっふっふふううう………うええ……」 でも、もうね。 一旦泣くと、もう止まらなくて止まらなくて! 祖父と別れ、号泣のまま休憩所に通される。 お蒸かしがおにぎりになって配給された。 もち米の塊。 朝から緊張してて食べてなかったからお腹減ってたんだ。 「うっうっ……」 でも涙は止まらず、鼻水も止まらず、お蒸かしを頬張る度、ハァーハァーと呼吸しながら食べる。号泣で。 流石に祖母も驚いていた。 私は血も涙もないタイプだと思ってたと思うんだよね。 実は涙もろいんだ。 30過ぎたら急にだ。 「ううっむぐ、ふっふっ……もぐもぐうぅぅぅ!」 「セイユちゃん、大丈夫?」 祖父の親戚だ。 「はい、ぅぅぅぅ、お、オカワリします」 味なんかよく分からなかった! けど。四つも食ったぜ!苦しかった〜。
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