5月前半

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5月前半

ある日の夕方、父と母は出勤。晩御飯を済ませて片付けをしていると、玄関からバタバタと足音がした。玄関の音はしなかった。 足音はそのまま階段をドカドカ上がると、台所の上、私の部屋でドスンバタン。 また階段を降りてきては登っていく。 まぁ〜た息子がやってるのか〜と、ふとソファを見ると、息子はテレビを見てアイスを食べている。 もちろん、祖母は茶の間だ。 私が「えっ!?」と声を上げると、祖母も息子も気付いた。 「父君が帰ったのかねぇ?」 まさか! 母も父も、帰宅後誰にも挨拶せずに2階に行くことは無い。それは家庭内で絶対のルールだった。例え忘れ物をして出先で一旦自宅に戻ろうとも、「忘れ物取りに来ました」と声をかけなければならない。 「だれ……………?」 祖母も息子も凍りついてしまった。 足音はいつもの祖母のアレでは無いのだ。 「ばあちゃん、息子君見てて。階段で退路がないと危ないから」 確実に人の足音。 口ではそう言いつつ、生身の人間じゃないだろうと覚悟。 こんな時、自分から霊に向かっていくという事は、意外と今まで無いことに気付いた。 2階に行くと、何も現れなかったがそれ以来足音は止んだ。 「なんだったのかしら」 「分かんない……」 その夜も特に何も起きなかった。 しかし、どうにも気になることが。 なんで私の部屋に来たんだろう。 今まで祖母以外が入って来ることは滅多になかった。 足音なんて論外だ。 廊下までは音がしても、部屋の中までは………。 そしてもうひとつ。 私の部屋の位置や枕の向きにひたすら口を酸っぱくしていた祖父。 ガードの硬い祖父が今や病院でフラッフラだ。 …………祖父が居ないことで、隙間が出来たのか……? 確証はないが。 これがゲーム内だったら。 攻撃性のある祖母が勇者。 防御力の高い騎士が祖父。 魔法-ポジティブを使う父が魔法使い。 攻撃を受けまくる母は前衛で戦うモンク。 こんな図式で家族というパーティが組まれているとしたら? 騎士がいない我が家は、ノーガード状態なのだ。 なんとかして騎士の代役をパーティの中から見繕わなければならない。だが、これはゲームじゃない。 祖父の代役はなんとなく父のような気がする。 今まで無かった父の周りにモヤがうっすら見える。 だが、それも祖父のような溢れるようなモヤじゃない。 「言われてみれば出てきたかな」位の程度だ。なんでこんなものが今更出てきたんだと思ったが、祖父が倒れてから父の飲酒量がドカンと増え、その割には酔ってない。 白モヤは、遺伝するのか? じゃあ私は何色なんだ? 私にはモヤは見えない。母もだ。 これは見えないんじゃなくて、引き継ぎ性があるんじゃないのか? その三日後、ラップ音がしたがすぐ止んだ。 気味悪さが抜けない。 そんなタイミングで。 珍しく、いとこから電話が来た。 祖母が電話をとったが、耳があまり良くないのか上手く話せていなかった。 私が出ると彼は酷く取り乱していて、父はいないかと聞いてきた。 急いで休日の父を二階に呼びに行く。 「いとこ君の息子君、事故だって!!」 打ちどころが悪かった。 もう、今までの生活はできない状態だった。 一生。 一生戻らない。 明日、お見舞いに行くことを伝え、全員で茶の間で沈んだように暗くなる。 「なんか、このところ……おかしくないか?」 言い出したのは父だった。 祖母も無言の同意。 おかしいのは見える世界だけの話じゃないのだ。 「あのさ。私霊感強かった話したじゃん? こないだの足音だってさ………」 祖母に話を振ると、ウンウンと頷いた。 「………そうね。 『あーゆーの』は、そういう事が絡むのよ」 祖母は今回無関係だ。 だが、オカルトに一切口を割らなかった祖母が同意してきた。 「心当たりが……」 「言ってごらん」 祖父の癌。 私もメンタルも。 息子君の事も。 父は背中が湿布だらけで原因不明。 母は足。 祖母は数週間前に手を骨折。 年末からずっと続いている、災いや病気の発覚。 「体の一部………どんどん減ってない?取られた部位考えたら、人間1人出来上がるよ!」 「まさか………!あぁ!! そうかもな…………あぁ、そうか。そういうことか」 何故か 全員 妙に納得してしまった。 霊障なんじゃないのか? 「全員同じところ、とかじゃないんだな」 「なんでだろうね?」 「知り合いにはいない気がするけれど、『誰』なのかしら。 どこかで拝んでもらう?」 「これを払える様な人って県内にいるの?」 「分かんない」 その直後、祖母から出た言葉。 「昔は知り合いが祈祷師やってたんだけど、もう亡くなっちゃったから私もツテがないのよね…」 あんたそんなツテあったんかい! 家族は未だ絶不調です………。
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