13人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
犬神、憑いてます。
犬神。それは古来より伝わる呪法の一つ。飢えた犬を首から上を出す形で地中に埋め、餌を前に置く。犬が餌を食べようと伸ばした首を刎ねるというものである。それを使役し、相手を呪う術者、及び、呪われたものを犬神憑きという。
そして、犬神憑きは必ず不幸になるというーーー
と、述べてしまったが。
ゴンッ
「あだっっ!」
首から下がなく、幽霊のような形をしている黒い犬が叫んだ。首には数珠で繋がれた「呪」と書かれた札をぶら下げている。そして頭上には、先ほど落ちてきたタライが乗っている。
隣にいた少女は額を抑えた。
「あ~や~!ちょっとは庇ってやろうとか思わないのかよ!」
「ない」
「ひっでえ!」
綾と呼ばれた少女は、犬をジトっと見下ろす。
「犬神は普通の人には見えないから、ボクが怪しい人だと思われるでしょ」
犬神はタライをそのままに、おんおん泣いている。
最初のコメントを投稿しよう!