犬神、憑いてます。

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犬神、憑いてます。

犬神。それは古来より伝わる呪法の一つ。飢えた犬を首から上を出す形で地中に埋め、餌を前に置く。犬が餌を食べようと伸ばした首を刎ねるというものである。それを使役し、相手を呪う術者、及び、呪われたものを犬神憑きという。 そして、犬神憑きは必ず不幸になるというーーー と、述べてしまったが。 ゴンッ 「あだっっ!」 首から下がなく、幽霊のような形をしている黒い犬が叫んだ。首には数珠で繋がれた「呪」と書かれた札をぶら下げている。そして頭上には、先ほど落ちてきたタライが乗っている。 隣にいた少女は額を抑えた。 「あ~や~!ちょっとは庇ってやろうとか思わないのかよ!」 「ない」 「ひっでえ!」  綾と呼ばれた少女は、犬をジトっと見下ろす。 「犬神は普通の人には見えないから、ボクが怪しい人だと思われるでしょ」  犬神はタライをそのままに、おんおん泣いている。
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