月明かりの睦言

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万琴さんがエプロンを付けて、朝食を作っている姿なんていつぶりだろう。 他人からしたら何の変哲もない光景かもしれないけど、俺にはその当たり前さえ、凄く胸にグッとくるんだ。 五年前は当たり前だった光景は、今日から俺の"当たり前"になってくれるだろうか? まだ"特別"で"当たり前"には程遠いのに、俺はそんなに悲しくなかった。 これ以上のハードな修羅場もあったワケだし。 「おはようございます」 「おはよう。あれ?シャワー浴びないで会社行くの?」 「軽く浴びてきます」 下着の替えもないから、シャワー浴びないようにしようかとも思ってたんだけど、会社で汚いと思われるのは嫌だし、ザッと汗とか流す程度でいいや。 「サッパリした~♪」 結局しっかり洗って、しっかりシャワーを浴びて、俺は気分よく着替えようとしたんだけど…。 「何で新しい下着?靴下まで新しいのになってる!?」 疑問に思いながらも、どう見ても俺用の下着だ。 万琴さんの好む下着じゃないし、靴下も俺が愛用してるメーカーの靴下で、足のサイズも範囲内ピッタリだし、万琴さんが揃えたのか…こんな短時間で? 疑問は尽きなかったけど、ありがたく使わせてもらうことにした。
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