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「いただきます!」
会社と遅刻という現実を引き合いに出されて、急いでご飯を掻き込む。
こうやっていっぱい食べるの久しぶりだな。
「いつも食器も食事も二人分用意してしまって、お茶碗にご飯をよそってから一人だって気付く…。自分から別れたのに、すぐに透を探してしまう…。洗濯物が少なかったり、料理を多めに作ったり、透が帰ってきてた時間に合わせて夕飯とか…。僕の生活サイクル、透が基準になってるんですよ…」
「万琴さん…」
明るく話そうとしても、思い出してつらいんだろうな、涙が溢れて何度も手の甲で拭ってる。
そんなふうにすると、目が赤くなってヒリヒリしてくるんだよな…。
食事を中断して洗面所に行って、タオルを水で濡らして固めに絞り、キッチンに戻って万琴さんにタオルを手渡す。
「手で擦ったら赤くなって痛みが出ちゃいますよ」
「うん…ありがとう…」
冷たいタオルを目に押し当てて、目を冷やすようにして、涙を止める万琴さんに、少しでも安心してほしくて、頭を撫でてみた。
サラサラの髪が、掌に心地よい感触を伝えてきて、会社に行きたくない方向に気持ちが傾く。
でも休むワケには…。
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