2 事件を追う者

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 今回みたいに「エリーナ 作品2」と言う血文字が倉庫の中の壁に書かれ、ペアルックの男女の死体が椅子に縛り付けられて、座らせられ、向かい合っていて、腹部からは内臓が飛び出している状態で、女性の顔は刃物のような物でズタズタに切り刻まれ、男の両眼は抉り取られて、その辺に放り投げられてあった。  どの事件も死体の損壊が激しく、身元を証明する物が発見出来ず、身元を割り出すのにかなり時間を要してしまった。  被害者の近辺や交友関係を当たったが、犯人には到底辿りつけるものはなかった……。 「夏海刑事!」  不意に名前を呼ばれ、我に返る。私の名前は夏海 涼(なつみ すず)。今回の事件を担当しているが、犯人に辿り着くことが出来ず、五人目の犠牲者を出してしまった現状が悔しくて堪らない。 「どうしたの?薄甲斐刑事」  私を呼んだのは、薄甲斐 弘樹(うすかい ひろき)。私のパートナーだ。端正なルックスで若いけど、行動力のあるタフガイ。頼りにしている。 「鑑識の話しによると、女性は顔面をかなり拳で殴られて、滅茶苦茶にされたようです。素手ではなく、グローブか何かをつけて殴ったようです」 「あんな状態になるまで殴り続けることが出来るなんて……。犯人は格闘家なの?」 「分かりません……。ただ、まともではないです。それだけしか……」 「五人も殺しているのよ。しかも、常軌を逸した方法で。まともではないわね」  結局、犯人はまともではない……。     
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