3 夢である者

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季節が冬だろうと、遠慮と言う言葉が存在することはない。極寒の中だろうと、関係なく露出の多い設定が要求される。少しでも、これが自分のためになる、ファンの皆に夢を届ける事が出来ると考え、達観するしかないのだ。  今日はスタジオ撮影の後はこれと言って用事はない。私はカジュアルな服装に着替えて、キックボクシングのジムに向かった。  私の特技でもあるキックボクシング。昔から身体を鍛える事が好きだった。中学校の時からずっと続けている。幼い頃は柔道をやっていたけど、何か燃え上がるような物を感じる事が出来なかった。  けど、このキックボクシングは違う。ミットやサンドバックを打つ時に響く、弾けるような音の響きがとても心地良かった。それと、何よりも楽しいのがスパーリング。絶対に負けたく無いと言う気持ちが働くと、我を忘れてパンチと蹴りを打ちまくる。特に相手を圧倒した時の心地良さは忘れられない。  そして、何よりもサラサラとした汗をかくことに、清々しさを感じる事が出来たから。  学生の時は試合もたくさん経験したよ。地区のトーナメント大会で優勝したこともあるから。ジムが加盟している団体の試合にも出たことがある。そこは、準優勝だったかな。  高校を卒業する頃には、プロにならないかって進められたけど、断った。芸能事務所からのスカウトがあったから……。     
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