Lead me.

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Lead me.

 僕の行く手を植物の壁が阻む。人の手の入らない森は、下草や寄生する蔦などが生い茂り余所(よそ)者の侵入を許さない天然の障壁だ。どこから手を付ければ良いのか分からない。僕は振り上げていた(なた)を下ろした。  30分以上も枝や下草を払って、鈍く痛みだした腕をさする。息を吸うと、青くさい草の香りが鼻と喉を刺激した。  行進が止まったのを察知して、しんがりで姉のリイナと話をしていた「オノ君」ことオーノサス・チモケウが最前列に戻って来た。彼は何も言わずに僕の手から刃渡り50センチほどの鉈を受け取ると、ざっ、ざっ、ざっと前方を薙ぎ払う。ほんの数回、鉈を振るっただけで、緑の壁に人が通れるほどのトンネルが出来た。 「すごいね、オノ君。どうやったら道になるところの見分けがつくんだい」 「弓月さん、昔からの道は変わらずそこにあるんです」  周囲を見渡しても数メートル先が見えないほど樹木が密生していて、けもの道さえ見つからない。言われてみれば、オノ君の正面だけ枝葉の密度が低く、ほんのり明るくなっているかなあという程度である。
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