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「ううん。私のために」
「そっか」と返って来た声は随分と軽い。軽率である。
「次来る時には、お見合い写真でも撮って持って来ようかな」
そう言う私も軽率であった。ぽんぽんと跳ねる木琴の音のような声で、それは、幼き頃の無邪気さを思い出させた。息で吹き飛ばした、たんぽぽの綿毛くらい軽い。ふわふわと宙に漂って、きっとどこかへと飛んで行ってしまったようである。
「あ、千佳ちゃん。ごめん、ここで止めて」
ブレーキを掛ける。
裕ちゃんは、慌てて車を降りる準備を始めた。
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