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「ありがとう。久しぶりに会えて嬉しかった。また、日本に帰って来た時は教えてね」
裕ちゃんは、どこか切羽詰まったように一息で告げると、今野邸に背中を向けて歩き出した。サイドミラーに映る背中は、昔のままの、トボトボと一人で石ころを蹴り飛ばして帰っている少年を思わせた。
なぜか急に去って行った彼に「馬鹿」と呟き、そうして私は、今野邸の門をくぐる高級車の後ろについて、今野邸の敷地に入る。高級車の後部座席から降りて来たのは、見知った男性だった。見慣れない私の車を不思議そうに見つめていたが、そのうち今野家の当主は私に気付き、此方へと近づいて来るなり目を丸めた。
「早川の千佳ちゃんか。随分と綺麗になったな」
あはは、と笑う。
裕ちゃんと同じこと言ってるや。
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