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久しぶりにハンドルを握った。いや、久しぶりなのはハンドルよりも、車体の外を流れる景色の方だった。数か月ぶりの日本は、何もかもが懐かしい。たった数か月、されど数か月、なんておじさんのような事を思って、苦笑する。
もう私も歳なのかしら、と懐かしい制服姿の女子高生を見ていると、一人、トボトボと繁華街を歩く高校生の男の子を見つけた。もしかしたら、歩道を歩く彼を表現するにあたって、トボトボと言う言葉は間違っているのかもしれない。
彼とすれ違った女子高生は目を丸め、立ち止り、キャッキャと楽しそうに顔を寄せ合いながら後ろばかりを振り返っている。彼女たちをあれほどまでに興奮させる一人の男の子が、トボトボと歩いているとは誰も思わない。
それでも、私がそんな表現をしてしまったのは、ランドセルを背負っていた頃の彼が、家で待つ習い事が嫌で、父親と顔を合わせることが更に嫌で、どこかで見つけた石ころを蹴飛ばしながら、トボトボと帰っている姿が浮かぶからだ。
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