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「幸奈のお見合いの話」
私は真っすぐに道路を見つめていたけれど、狭い空間が、彼の動揺をしっかりと肌に伝えてくれた。恥ずかしそうな、もじもじとした音が聞こえる。
「もう、終わったことだし……」
ヘナヘナ萎れる葉ように、シートに背中をもたげた裕ちゃんの姿が、視界の端に見える。
「そもそもさ? 今時、お見合いとかあり得ないでしょ。まあ、俺がなんて言ったって、姉がするって言うんだから止めようもなかったんだけど……そうだ。お見合い写真、見せてもらったら? 綺麗だったよ。写真撮る時、馬子にも衣裳だってからかったら怒られちゃったんだよね。ははっ」
裕ちゃんは幸奈と仲良くやっている風に告げたけれど、すっかりと大人びた今の裕ちゃんが、あの子と仲良くしている姿が思い浮かばない。
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