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なんだか急に成長した子供を見ているかのような、それこそ、〇〇年後などと言って一気に時が進んだ朝ドラを見ているような気分で、私は裕ちゃんと対峙しているのである。言わば私は視聴者なのだから、その〇〇年の中で起こった出来事を知る術はなかった。
私が父親の仕事の都合で他所に引っ越してからと言うもの、幸奈とは手紙や電話のやり取りのみで、高校生になってからはスマホを買ってもらって、報告がてらに写真なんかを送り合った。近況報告、と言葉にしてしまうと、真面目な彼女は、まるで仕事か義務のようにこなし続け、それは今でも続いている。
連絡は取り合って居るものの、私は大学生になって海外に留学し、そのまま海外の企業に就職を決めて向こうの人になってしまったため、親友と会う約束ができたのも、随分と久しぶりのことなのである。
近況報告と題して送られて来ていた写真では、どんどんと大人になっていく裕ちゃんの姿を見ていたのだけど、実際、こうして裕ちゃんと顔を合わせるのは、もう、何年振りになるだろう。思い出せない。だからだろうか。「千佳ちゃん、綺麗になったよね」と何気なく落とされた言葉に動揺してしまう。誘惑されそうになる。
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