1

8/12
前へ
/12ページ
次へ
「どうして?」  私は口籠る。  運転に集中していたフリをして、わざと時間を取った。 「……私の、人生だから」 「ふーん。千佳ちゃんは、結婚したくないんだ?」 「まあ、うん。今は仕事を優先したいしね」  ……嘘だ。本当は、私だって結婚したい。お見合いで、とてもいい人を見つけた幸奈を羨ましがっている。けれど私は、気丈に振舞う。そうしなくてはならない。今、隣に居るのが裕ちゃんだから。幼い頃、「今から千佳ちゃんは、裕のおよめさんね」と一輪の花を差し出してくれた裕ちゃんの隣だから。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加