私と「友達」

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私と「友達」

「いつも通り、ケンジは心臓発作で突然死したことになったわ」 「友達」は、にこにことしている。手にした小瓶には、黒い球体が入っていた。  彼女は自由に姿を変え、魂を奪うことができる。元カレのところに行ったのは、私に化けた「友達」だ。  ストーキングからは解放されたが、複雑な思いだった。また人間に手をかけてしまったのだから。 「ありがとう……。でも、また私は人を殺めてしまった」 「仕方ないじゃない。あんなにしつこかったんだから。いつものようにナナコが捕まることも無いし、良かったじゃない」  そう言って「友達」は笑う。私は彼女の正体を知らない。知ってはいけない気がするからだ。  彼女にはじめて会ったのは小学生の頃だ。いじめられて河原で泣いていたところを話しかけられ、こう言われた。 ――死ぬ時に魂をもらう代わりに、あなたの気に入らない人を消してあげる  つらくて仕方がなかった私は首を縦に振ってしまった。するといじめっ子は次の日に心臓発作で亡くなった。そして彼女は小瓶に入った黒い球体を見てにこにことしていた。  それから、彼女は私の「友達」として、常に隣にいた。しかも普段は明るくてかわいらしいステキな女の子で、一緒にいるとものすごく楽しい。  気がつけば私は、完全に「友達」に取り込まれてしまい、耐えきれなくなることがあるとその相手を彼女に消してもらうようになった。  中学生の時は私に手を出そうとした教師、高校生の時はしつこく痴漢しようとしてきたサラリーマンのおじさん、大学ではいわゆる「ヤリサー」の部長で、私も手籠めにしようとした大学七年生…… 「友達」の誘惑に負けて、手をかけた人間はこれで五人目だ。 「また邪魔な人がいたら魂を奪ってあげるわね」  にこにこしている「友達」に私は言った。 「でも、こんなことはこれで最後にしたいと思うの」 「それはあなたの自由よ。私はあなたが死ぬときに、魂さえもらえればどっちでもいいもの」  そう言って彼女は微笑んだ。 「いつも思うんだけど、私の魂が欲しいだけなら、すぐに殺せばいいのに、どうしてそれをしないの?」 「だってそれじゃあ、あなたを私の色に染められないじゃない。私はね、隣でずっと見守って、美しい輝きを極限まで増したあなたの魂が欲しいの。こんなどす黒い魂じゃ無くてね」 「友達」が指差した先には、小瓶に入った黒い球体が5つ並んでいた。
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