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「僕は、海未さんのまっすぐな性格がとても好きです!」
気持ち悪い。
顔だけはいい男にそんなことを思う。
こいつらは、心の底からはそんなことは思ってないくせに、こういう場でだけはニコニコしながら言う。
その後……結婚したらもう用はないと放置やら浮気やらを繰り返すんだから、びっくりする。
「そうですか」
冷静に返す。
形の整った眉がピクリと動く。
「海未、そういってくれてるんだからそんな言い方は……」
「私のことはいいです」
父の言葉も切り捨てる。
「そんなことより、この方と結婚したらうちの会社にはどのようなメリットがあるのですか?」
父に問う。
そう、つい先ほど私のことはいいと言ったのは、この場で気にするなということではなく、私の気持ちを気にするなということだ。
「……え?」
今度は相手が驚いている。
それはそうだろう、華の女子高校生が顔やらなんやらよりも会社の利益を優先すると言うのだから。
「私の好ましいところ、なんてそんなくだらない事をおっしゃらずに、利益について話してください。……普段はそうやって、様々な女性たちを虜にして来たのでしょうけど」
みるみるうちに真っ赤になっていく整った顔を、私は表情も変えずに見つめていた。
「お前みたいなやつこっちから願い下げだ!」
テーブルを思い切り叩き、スーツを乱しながら怒り狂う男に、私は言った。
「それは良かったです。それと、背後には気をつけることですね。恐らくですが、つい最近まで付き合っていらっしゃった女性が」
「……は!?」
男が少々大袈裟に振り返ると、そこには鬼の形相の女性が。
「あ、ちょ、違うんだよ!」
「なにが違うのか、じっくりと2人きりで聞こうじゃないの!?」
健闘むなしく女性に引きずられていく男。
「あ、そこのものすごく綺麗な人!ナイス!!」
親指を立てるグットサインをされたのでとりあえずそのまま返す。
「久々に、面白いものを見させてもらいました!」
ニコニコ笑いながら。
「……海未」
父の声。
この声は怒っているのか、それとも呆れているのか。
「お前は……本当に……」
……後者だったようだ。
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