14人が本棚に入れています
本棚に追加
「またですか?」
母に呆れながら言われる。
「海未は、なぜかお見合いになるとあんなことを言い出す。普段は聞き分けもよく、頭もいい上になんでもできる、とてもいい子なんだけどなぁ…」
父も苦笑いで返す。
「私は、そもそも結婚ということに興味がありません。男性と結婚などをするならば、同性……女性と結婚する方がまだマシです」
真顔で言う。
「はぁ……毎回そんなことを言うんだから、もういっそのこと穂乃果さんと結婚させますか?」
幼馴染の穂乃果のことを持ち出され、内心ビクッとしてしまうが、あくまでもポーカーフェイスを保つ。
「確かに、それもアリだが……」
いやアリなんですか。
と、心の中でツッコむ。
「どちらかというと、うちの会社の姉妹会社の社長さんの娘さんの方がいい気がするんだが……」
うちの会社の姉妹会社の社長さんの娘さん?随分と距離が長い関係だ。
「……いえ、1人、だけ…………1人だけですが、海未さんにぴったりの方がいます」
長く熟考した後、母は言った。
「……ことりさんです」
ことり。
聞き覚えのない名前に首をかしげる。
「……誰なのですか?その、ことりさんというのは」
「おや、知らなかったのかい?母さんのお友達の娘さんだよ」
いつも無表情、無関心な私が興味を示したのが珍しかったのか、少し笑いながら教えてくれた。
ことり。
…………初めて聞く名前なのに、不思議とずっと前から知っていたような懐かしさを感じる。
「お気に召したようですね」
「そうだな」
なにか言葉が飛んで来たように思えたが、気のせいということにしよう。
「……ことりさんのお母さんは、海未さんの通う音ノ木坂の理事長を務めていらっしゃいます。なので、ことりさんも一度は見たことはあると思うのですが………」
理事長……。
あの、謎の髪型をした理事長、か。
………相変わらず、お母様は随分と変な方と交流が深いのですね。
最初のコメントを投稿しよう!