1話 二人の出会い

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「えーと、私から行きますね。私のお見合い相手様のお名前は『ことり』さんです」 ありのまま伝える。 「……え?」 そりゃそうだ。 お見合いをしに来て部屋を開けたら女の人がいて、その人の相手の名前が自分の名前なんだから。 「『ことり』って男性なのに珍しい名前ですよね~。このようなお名前は、大体は女性につけられると思っていたのですが……それは偏見だったようですね……そういえば、あなたのお見合い相手様のお名前は……?」 冗談を言いながら名前を言うように促すと、偶然だとでも思ったのか、口を開いた。 「私のお見合い相手様のお名前は『海未』さんです。普通の『海』に未来の『未』で海未って読むんです。珍しい名前ですよね」 もちろん出てくるのは聞き慣れた私の名前。 だから、驚いたような演技をする。 「……え?」 「え?」 相手も聞き返してくる。 脂汗が見える気がするが、気にせずに言う。 「あの……その名前、私の名前です」 「……」 そりゃそうだ。(2回目) 相手のお見合い相手の名前が自分で、自分のお見合い相手の名前が相手の名前ならば、必然的にその2人がお見合い相手、と言うことになる。 同じ店内に、同じ条件で、同じ名前の人が2人いるなんてありえないのだから。 「……」 「……」 沈黙が続く。 「……えーと、もしかして、あなたも……?」 遠慮なく聞かせていただきますよ?ことりさん! 「……はい、ことりです」 チュドーン! 私が事実を知らなければ、そんなような音が胸の中に鳴り響いていたでしょう。 まぁ、知っていたので鳴り響いたのはことりさんの方でしょうけど。 「こ、これは、あれですかね?あの、最初に言った、間違いの可能性が…」 あまりにも可哀想なので助け船を出してやる。 「あ、そ、そうですね!きっとそうですよ!うん!」 ことりさんが、ものすごい勢いで首を縦に振る。 「と、とりあえず、母に連絡してみますね!」 急いで携帯を探す彼女の姿をぼんやりと見守る。 「し、失礼しました…」 ピシャリ ………意外に可愛い人だった。
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