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「……失礼します」
「あ、どうでしたか?」
困惑したような声に問う。
もちろん、答えは分かりきっているのだが。
「………あの………とても、とても言いにくいのですが……」
気まずそうに話し始める。
……優しい人なんだなぁ。
「……はい」
「……間違いではない、そうです」
「……つまり?」
ちょっと物分かりの悪い人を演じる。
「…………今回のお見合いは、私達だったということです」
「……」
なんと言うことでしょう。
と、なにも知らなかったら言うでしょうね。(2回目)
「……なるほど」
苦笑いをしながら答える。
「……実は、うちの両親はサプライズが大好きなんです。なので、恐らくですがこれもサプライズと言う名の冗談と言うことでしょう」
ものすごい屁理屈を言う私はまた言葉を紡ぐ。
「私達のくだらない茶番に付き合わせてしまい、申し訳ありません」
軽く頭を下げる。
「……あ、いえ、こちらこそ……」
慌てた様子で頭を下げる。
ある程度礼儀正しい人なんだなぁ。
………これは……。
バン!
「ことりさん!」
母さんが突入してきた。
うん、予想はしてた。
「え……?園田さん…?」
困惑してる。
うん、そうだよねー。
「その目の前にいる方は私の娘です!そして、あなたの婚約者です!」
「……………はぃ?」
あ、その顔可愛い。
………なんてことは一切顔に出さずに母の言葉に答える。
「知りませんけど」
「はぃ?」
今度は母が困惑する。
いやー、この空間がパニックになってきましたねー。
「いや、あの………え?」
うん、その顔も可愛い。
「う、海未さん?」
「はい、なんでしょうかお母様」
澄ました顔で答える。
「あの、もう演技はおわr」
バン!
机を叩く。
「……あ、すいませんね。虫がいたもので。それで、なんの話でしたか?」
母が顔を真っ青にして言う。
「い、いえ。なんでもないです……」
「いやいや!母さん!そこで負けちゃダメだろ!?」
あ、お父様。
「いや、だって、普段怒らない海未さんがあんな怖い顔するとか………」
ものすごく震えてますねー。
「あー、もう!海未!俺は母さんと話してくるから、ことりさんとちゃんと話しておきなさい!いいね!?」
「よくないです」
真顔で断る。
「んな変なこと言ってないで、話してなさい!」
バタン!と襖が閉まる。
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