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私のばっちゃんは、そのお父さんであるひぃじっちゃんが17になる時の子供だ。だからばっちゃんは79歳で、ひぃじっちゃんは96歳。戦争だって生き延びて、そんなひぃじっちゃんは90過ぎてるのに元気で元気で、つい先月ばっちゃんに置いて逝かれてしまったぐらいに元気だった。
「知って損する事は無い。今迄に何人も見送って来たのだって今日、お前のばっちゃんと笑顔でお別れする為の練習だったんだろう。」
畑仕事で歪んだ関節をした掌で、呆然と棺を眺めていた私の頭を撫でたひぃじっちゃん。見遣ればひぃじっちゃんは自分で言った通りに穏やかに笑っていて、それで漸く私は泣いた。
「まだユキには辛いかもしれん。中学生だものな。シュウの奴に至ってはもうすぐ保育園か、いつかばっちゃんの顔も忘れるのかもな。でもユキ、お前は忘れんといてやってくれ。」
私はしきりに頷いた。ひぃじっちゃんは頭をポンポンと撫でた。
それから49日が過ぎて、お父さんとお母さん、そしてじっちゃんから。ひぃじっちゃんの様子が可笑しいから施設に入れようと言われて耳を疑った。
私はシュウを連れて、別に遠くに住んでいる訳でもないひぃじっちゃんの家に毎日行く事にした。
予定なんて特に無い、茹だる様な夏休みだったから出来た事だった。
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