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「今日も来たのか、暑いのにわざわざ。」
「うん、来たよ。アイス食べよ、ひぃじっちゃん。」
「アイス! ひぃじっちゃだけずるい、しゅうも、しゅうも!」
「シュウは私とダブルソーダね。ひぃじっちゃんは、こっちのバニラ。」
いつかにばっちゃんが付けていたテレビが、骨粗鬆症の防止策はごまんとあるかもしれないけれど、基本はカルシウムの摂取だと言っていた。そしてバニラのカップアイスは、一つ食べるだけで一日のカルシウム必要摂取量の3分の1は補えるとか、なんとか。
「こうも毎日氷菓子を食っていると腹を壊しそうだ。」
「ひぃじっちゃん、そこまでヤワじゃ無いでしょ?」
半分こに出来るダブルソーダをシュウと食べ終えたら、ひぃじっちゃんがアイスを食べ切るのを待つ。その間に私は他愛もない会話をひぃじっちゃんとするのだ。ひぃじっちゃんはいつも縁側の右側が定位置で、私達は左側で騒がしくする。
「アカネちゃんの隣の席の奴ね、やたらアカネちゃんに付き纏って来るらしいの。ウザったくて放っておいたらね、こないだこう言われたらしいの。嫌だと思ってるならハッキリ言って欲しい、って! そうじゃないんだって。好きでも嫌いでもないのに、それに告白された訳でもないのに、どうして振ったみたいな事しなきゃいけないの、って!」
「付き纏うだけ付き纏って、自分の感情が伝わっていると思うのは疎かだな。努力が足りん。」
「伝わってるとしても、気持ち悪いよねー!」
「……女心は複雑だな。俺には分からん。」
シュウはキャッキャと、ひぃじっちゃんの家に置いてあるミニカーで遊んでいた。ぶぅーんぶぅーん、だって。何の気無しに見ていたら、シュウが大黒柱に頭をぶつけた。
「「あ。」」
「……………………ぅ、」
何が起こったのか分からないという顔、けれど痛みは感じているらしい。涙を貯めて行くのを見ながら近寄り、よしよしと背中を摩ってやった。
「ほら、痛くない痛くない。シュウは偉い子、泣かない強い子!」
「ぅ、う゛、うぅ~~!!」
どうしても耐えきれなかったらしい涙がポロポロと落ちる。ひぃじっちゃんは台所の方に行ってしまった、多分だけど冷蔵庫の中にある冷えピタを取りに行ったんだ。鶯張りでもしてあるのかと思う木造建築がひぃじっちゃんの足音をギシギシと鳴らした。
「みぞれさん?」
「え?」
それは唐突だった。
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