人は日々、学習する。

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次の日から、真ん中にバニラアイスの詰まったみぞれアイスを買って行くようになった。カルシウムは減ったけど、何としてもみぞれさんが誰なのか聞き出さなければ問屋が下りない気がしていた。それにみぞれアイスなら、ソーダ味やいちご味、コーヒー味なんてのもあるからひぃじっちゃんも味に飽きなくて済むし。 けれどそれとなく話題を降ってみても、ひぃじっちゃんはみぞれさんについて何かを話す事は無かった。そんなにも、家族に話せない事なんだろうか。良くない考えが頭をよぎる。でも仕方ないと思う。 「みぞれさんみぞれさん、このかき氷美味しいですよ。みぞれさんも如何ですか!?」 「みぞれさんはやっぱり美人ですねぇ。村一番の美人と謳われるだけあります!」 「ぼく、みぞれさんのお気に障る様な事してしまいましたか……? ごめんなさい。」 だってひぃじっちゃんの姿をした男は、よくみぞれさんにデレデレな態度をしているからだ。男は子供が憧れを見るようなキラキラした眼で、ずっと話をしてくるのだ。 「いえ、大丈夫。」 私はみぞれさんがどんな人だったのか分からないから、素っ気ない返事をするしかなくて、でもひぃじっちゃんはそれでいいらしい。ひぃじっちゃんに夢を見せながら、でも私はみぞれさんについて沢山知りたいから、ひぃじっちゃんの見ている夢を利用する。 「…………俺、今飛んでたな。」 「おかえりひぃじっちゃん。」 「やっぱりか。飛んでたか……。」 以前と変わった事というか変化があったとすれば、ひぃじっちゃんは記憶が飛んでいる事を自覚した。私は昔の頃になっているとは伝えたけれど、みぞれさんについては話さなかった。でも記憶が飛んだ後のひぃじっちゃんは渋い顔をしているから、何となく察しているかもしれない。 その日は予報ハズレの豪雨が、私とシュウの帰り道を塞いだ。どうどうと唸る風が、庭先のノウゼンカズラとかいうらしい花を揺らしては落とす。ばっちゃんから教えて貰った名前だ。 「昼寝して、それでも駄目なら迎えに来て貰うか。」 ひぃじっちゃんの提案は最もで、夏の昼下がりで湿度は高かったけれども、風のお陰でひんやりとした過ごし易い空気だった。敷座布団にタオルケットを二人分用意してくれたひぃじっちゃんはそれを居間に敷いてくれた。私とシュウはそこに寝っ転がる。
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