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「うそっぽい」
幼いながら私は大人に誤魔化されている気がしてならなかった。甘いケーキやジュースを子どもの口に入れないように 辛いよ とか 苦いよ と大人が嘘をつくように。本当はもっと深い理由があるのではと子どもながらに思っていた。
「かなちゃんはおませさんだなあ」
大人たちは笑った。
大おばあちゃんの家は元々名のある家で昔はお手伝いさんがいて、兄弟も十一人だったから一人くらい家に住む人が増えたところで誰も気にも留めなかったらしい。当のおじさんは畑仕事や家事全般、子守りや将棋に囲碁など何でも得意で、大おばあちゃんのお父さんやお母さん、大おばあちゃんの兄弟みんなから慕われていたらしい。
大おばあちゃんは、「この家を継ぐのは百花だ」と父親から言われていたため、おじさんもそのままこの家に残った。大おばあちゃんの夫になった大おじいちゃんはとても大らかな人で、おじさんが家にいることを咎めるどころか人柄を気に入り、二人は熱い友情を育んだらしい。
この時はなんだか家族親戚ぐるみで私を騙している気がして気味が悪かった。でもたまにお母さんやおばあちゃん、おばあちゃんの妹が変なことを言っていた。
「そう言えば私の記憶では、バンパはずっとバンパなのよね」
とお母さん。私が不思議そうにしているとおばあちゃんもおばあちゃんの妹も
「私たちもよ。一番古い記憶から、ずっとあのままよ」
と言っていた。
「かな、カニとりにいくぞ」
おじさんが座敷の襖を開け私を呼んだ。私は走っておじさんに抱きついた。
「バンパごめんね、お願いします」
お母さんがおじさんに言った。バンパは
「今夜は餃子が食べたい気分だな」
と笑顔で言った。
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