夏の日

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夏の日

─美紅side─ 色々ありすぎた会合から早くも一か月。 私はというと、大学生活最後の夏休みを満喫していた。 そして… 「よし、フル単!!!」 8月も半ばの本日、無事にインターネット上で前期の単位を一つも落としていないことを確認。 他の大学よりも成績開示が遅くて無駄にハラハラさせられたけど、それでも我が大学様に感謝感謝。 いやぁ…良かった良かった。 一時は本当にどうなるかとも思ったけど、これで加奈たちと揃って卒業することができる。あとは後期の必修ゼミと少し残っている単位を回収するだけだ。 「弘翔ー!無事に単位ゲット!!」 ソファで寛ぎながら本を読んでいる弘翔に勢いよく抱き着けば、難なく抱きとめられる。 「おー、よかった」 「もっと褒めて!」 「んー? 別に心配はしてなかったからなぁ」 呑気に言いながらさりげなく髪にキスを落とす。 『応援はしてるけど、心配はしてないよ』と試験前に何度も言ってくれたけど、この人はやっぱり私の喜ぶツボをピンポイントで突いてくる。 自分のことのように嬉しそうに破顔されてしまえば、頑張った甲斐がある。 「これで残りの夏休みを心置きなく楽しめる!!」 「…今までだって成績開示のこと忘れて夏休み満喫してただろう」 「そうだけど、そうじゃないの!」 弘翔の言う通り、今年の夏はすでにかなり遊んでいる。 弘翔は普通に仕事があるからデートはいつも通りだけど、友達と某夢の国にも行ったしBBQもした。 真希たちと那須でコテージを貸切って3泊過ごしたのは最高に楽しかった。 「再来週の海も楽しみ~!」 弘翔の膝に頭を乗せて言えば、慣れた手つきで頭を撫でられる。 ちなみに、着ていく予定の水着は先日、真希たちと一緒に買いに行った。 高校以来、海には行っていないのでビキニなんて着たことがないのに、三人は私の意見は全く無視で布面積が明らかに少ない大胆なものを勧めてきた。 あれよあれよという間に買わされてしまったし… 三人は似合うと太鼓判を押してくれたけど、恥ずかしさと不安が半々くらい。 「ねぇ、弘翔ー」 「んー?」 「なんで毎年、8月30日と31日って決まってるの?」 組員さんの家族もいっぱい来るって言ってたけど、小中高生って9月1日から学校が始まるのに大変じゃないのかな? 「8月31日は…兄貴の誕生日なんだよ」 「え、そうなんだ」 だから毎年8月31日なのか。納得。 『よし、フル単祝いで気合入れて夕飯作るかな』と弘翔が立ち上がったので、その話は終わってしまった。 だけど…この時、弘翔が少しだけ寂しそうな表情を浮かべていたことに私は気が付かなかった。
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