第二章 束縛はしないが嫉妬はする。盛大に妬く。

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第二章 束縛はしないが嫉妬はする。盛大に妬く。

「で、美紅~!どうなのよ噂のイケメン年上彼氏とは!うまくいってんの~!?」 あの出来事から一か月、秋庭さんと付き合い始めてから一か月が経った。 一ヶ月が長いのか短いのかはわからないけど、色々な事がありすぎてあっという間だったのは確かだ。 秋庭さんたちのおかげで5月から大学に復学することができている。 1年生の後期に取るはずだった単位が取れてなくて、かなりハードスケジュールな大学生活だけど… 短大だから二年で卒業するためには仕方ない。 1つでも単位を落とせば卒業単位が足りなくなってしまう...フル単必須のマジ大学生モード。 秋庭さんにその話をしたら、『頑張れ、俺も大学時代は単位取るのに苦労したよ』と笑いながら言っていた。 ──真希(まき)、加奈(かな)、由美子(ゆみこ)の大学に入ってからずっとつるんでいる4人で昼食をとっていると、いきなり話題が彼氏の話になった。 親友である3人には悠太と別れたことも、秋庭さんと付き合い始めたことも言ってある。 さすがに秋庭さんの職業は隠してあるけど…。 私が休学している間、三人とも私のことを本当に心配してくれていた。何度か電話もくれていたし、バイト先も訪ねてくれていたようだ。 だから…またこうして4人で他愛もない話をして笑いあえるようになって本当に良かった。 悠太の話は意識して避けているけど、秋庭さんの話を笑顔でできることが堪らなく嬉しい。 「あー…秋庭さんのこと??」 「そうそう!その秋庭さん!」 ニヤニヤと笑いながら肘でつついてくる真希。 3人には悠太と別れた理由は束縛がエスカレートしたからだと言ってあるし、秋庭さんは別れるときにお世話になった人だと言ってある。 「なによー浮かない顔して!私と真希なんか絶賛彼氏募集中なんだから少しくらい幸せ分けてよー!!」 おにぎりを頬張りながら言う加奈は真希と肩を組んで『非リア同盟組むぞ!』とかなんとか言いながら盛り上がっている… 二人とも可愛くてモテるのに、理想が高すぎるのが問題だと思う。 真希と加奈はイマドキ!って感じのthe女子大生で、とってもオシャレだし流行をそのままいく感じ。 でも二人ともチャラチャラしてる訳じゃなくて、友情には熱いし真面目な話は本気で聞いてくれる大事な友達。 由美子は二人とは少しタイプの違ったサバサバ系。大人びてて、とっても頼りになって優しい。 真希と加奈がバカやらかす時は必ず由美子が止めてくれている。 でも、たまーに由美子も悪ノリに便乗する。それこそ先陣切って悪ノリを決行する...。そんな3人のノリが大好きだし、とても居心地がいい。 ──真希たちがニヤニヤと私を見る一方で、私と同じで彼氏持ちの由美子は話が自分に飛び火しないように課題のレポートやり始めちゃったし… 「で、ホントにどうしちゃったの?前は惚気てたのに…噂の秋庭さんに不満でもあるの?」 少しだけ真面目な顔の真希。 ホント、だいたいふざけてるのに、真面目な時は真面目だ。 こういうとこ、好きだなぁ。 「いやっ、不満ってわけじゃないんだけど…」 「じゃあ何よー!言っちゃえ言っちゃえ!!」 いや…本当に不満ってわけではない…。 秋庭さんに不満なんかあるはずがない。 秋庭さんは私なんかにはもったいない人だし…不満なんかないし、彼氏として秋庭さん以上の人なんかいないと思う。 ただ…一つだけ…ほんとに一つだけ最近悩んでいるのが… 「……優しすぎる」 「「「は?」」」 私の言葉に3人の素っ頓狂な声が重なった。 我関せずでいた由美子もちゃっかり聞いていたらしい。 真希は呆れたように顔をしかめているし、加奈は半笑いだ。 「ちょっと何言ってるのかなこの子…聞き間違い!?」 「いやだから…秋庭さん優しすぎるの!」 私の切実な悩みに三人は訝し気な視線を寄こしてくる。 『ナニイッテンダコイツ』と言葉には出さないけど目線で言ってくるのが伝わってくるような...。 確かに、そりゃ…贅沢な悩みだってのは分かってるんだけど…
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