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「ねえ、明日さ、もっと早い時間に来てみる?」
「は?」
僕の提案に彼女が顔を上げる。口の周りがオレンジ色で面白い事になっている。
「スペシャルラーメン食べたかったんでしょ?」
予想はしていたけれど彼女はやはり沈黙した。敵だらけの彼女は鞭で100回打たれても負けないくせに、飴一粒で萎縮してしまうのだ。
「……あんたは、……いやにならないの?」
「何が?」
「明日も私の相手をするとか……」
「いやじゃないよ。明日も明後日も」
いやだったらとっくに距離を置いているだろう。彼女が戦ってきた他の人たちのように。
「……あんた意地悪すぎ。なんでこんなとこで泣かすの」
「大丈夫だよ。壁際だから誰からも見えてない」
泣きながら麺をすする彼女の涙を拭い、鼻水も拭い、口の周りも拭いてやる。世話がやけるけど手離す気はない。
担々麺はおいしかった。
明日も僕は一粒の飴でいられますように。
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