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「はぁ?あんた馬鹿なんじゃないの?そんな謙遜ばっかりしてたらね、世の中渡って行けないよ!」
「そうだねぇ……」
うまく世渡り出来ていない彼女に説教される僕も末期だなぁと思う。
自分なりの「正義」をしっかり持って日々戦っている彼女と、空気を読むことだけに特化してしまった僕。僕らはタイプは違えども二人とも世の中から取り残されてしまっている気がする。
「はぁぁ、まあいいや。いっぱいしゃべったらお腹空いた。ラーメン食べに行こ!ネットで良さげなところ見つけたんだ」
一通りグチってすっきりしたらしい彼女が僕の車のキーを掴むと玄関へと歩き出す。相変わらず切り替えが早い。勝手に助手席に乗り込んでいる行動力も、素早すぎる。
「どこのラーメン屋さん?」
聞きながらキーを回しエンジンをかける。冷えた車内で震えながら彼女がエアコンを操作する。吹き出し口から出てくる強風が冷たい。
「こないだ改装してたとこ。リニューアル記念のスペシャルラーメンがあるんだって」
「あぁ……」
地名も店名も覚えてないらしい。それでもなんとなく察して車を走らせる。まだ冷たいエアコンの風が不快でそっと弱風設定にしてみる。すかさず彼女に強風に戻される。諦めて運転に集中する。僕は彼女と違って戦う気はない。
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