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『スペシャルラーメン本日分完売しました』
メニュー表に貼られた小さなメモ紙を見た途端、彼女の動きが止まってしまった。
「嘘だ……、嘘だぁ……!」
「しょうがないよ、今日はもう遅いし」
「嘘だ!こんなのが売り切れるわけないじゃん!作るの面倒になっただけなんじゃない?」
「いや、さすがにそんな……、もういいから普通のラーメン注文しようよ。ほら、担々麺もおいしそうじゃない?」
「じゃあそれでいい」
不機嫌さを隠す気ゼロのまま彼女が呟く。すかさず僕は担々麺を二つ注文する。彼女はまだドス黒いオーラを纏ったままテーブルを睨んでいるけど、気にしなくていい。店員さんとケンカにならなかっただけマシだし、どうせお腹がいっぱいになる頃には彼女の機嫌は直っているだろうから。
程なくして運ばれてきた担々麺と、湯気の向こうで夢中で箸を動かす彼女を眺める。なんでこんな時まで一生懸命なんだろう。辛さと熱さと戦いながら、全力で食べている姿を見て笑いそうになるのを必死でこらえる。
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