こぶ取り爺さん殺人事件

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こぶ取り爺さん殺人事件

 あるところに、頬に大きな瘤のある隣どうしの二人の翁がいた。片方は正直で温厚、もう片方は瘤をからかった子供を殴るなど乱暴で意地悪であった。ある日の晩、正直な翁が夜更けに鬼の宴会に出くわし、踊りを披露すると鬼は大変に感心して酒とご馳走をすすめ、翌晩も来て踊るように命じ、明日来れば返してやると翁の大きな瘤を「すぽん」と傷も残さず取ってしまった。 それを聞いた隣の意地悪な翁が、それなら自分の瘤も取ってもらおうと夜更けにその場所に出かけると、同じように鬼が宴会している。隣の翁は出鱈目で下手な踊りを披露したので鬼は怒ってしまい、「ええい、下手くそ!こんな瘤は返してやる。もう二度と来るな」と言って昨日の翁から取り上げた瘤を意地悪な翁のあいた頬にくっつけると「今日の宴会はもうやめだ」と興ざめして去ってしまった。 それから正直な翁は瘤がなくなって清々したが、意地悪な翁は瘤が二つになり難儀した。  民話を読み終えた。  『こぶ取り爺さん』も、百鬼夜行の一種らしい。 「君は小太りだな?」  新井からムカつくことを言われた。  刺し殺してやろうかと思った。  霧山に住む80歳の男性が資産状況を確認する『アポ電(アポイントメント電話)』を受けた後に殺害された。  翌月の3月13日に22歳の無職、27歳の土木作業員、22歳の無職の男性3人が強盗殺人の疑いで逮捕された。  死んだのは尾崎清太元会長だった。  無土無ってダイイングメッセージから、新井はスグに犯人を割り出した。  遠野にも小太りジイサンの話は残っている。  頬でなく額に拳ほどの瘤を持つ爺が二人という設定。しかも山奥の神様に詣って夜篭りをしている途中、神楽を歌い神社に入り込む六尺(180cm)程の赤ら顔、鼻高の天狗達に瘤を取ってもらう話(遠野、和賀郡の民話)。天狗が登場する(また別の?)話では、隣の翁が天狗が歌う「天狗、天狗、六天狗」のあとに、昨夜の翁のように自分も勘定に入れ「俺も足して七天狗」と言うべきところ、「天狗の鼻かけろ」などといいかげんに歌って踊り、歌詞の内容が天狗を怒らせるというものもある。  尾崎が殺された場所も遠野だった。
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