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「もう……うちなんて、全然言ってくれなくて……」
彼女が口火を切った。
「ええ?そうなの?」
わたしは驚いたふりをした。だってこうしたとき、なんてコメントしていいかわからないから。
「私、もう40歳になるの。女でいられるのはあと10年よ」
「はあ」
わたしはもう45歳だけどねとは言わなかった。
「このまま朽ちて行くわけ? 私たち」
「そうねえ……」
わたしはお茶を飲んだ。
わたしも含まれているのかと心の中で突っ込む。
確かに45歳だし、皺も、白髪もありますが、夫婦お互い様なのではとおもう。しかし、黙っていた。
お茶が冷めちゃう。
わたしは茶碗を両手で持った。
一人ではお茶も飲もうとも思わないけど、お客が来るとお茶を入れようと思うから、そういう点ではいいのかもしれない。
でも、同じ人が毎日だと正直話すこともないし、少々辟易している。
「このまま終わるなんて嫌よ」
そういうと彼女は長いまつげをバサバサとまばたきしてみせる。
ずいぶん長いまつげだ。
わたしの視線に気が付いて、彼女は笑った。
「ツケマよ。エクステンションしたの」
「いいね。素敵よ」
わたしはとりあえず褒めておいた。
「それでね、私、整形しようと思うの」
「ええ!」
私は驚いた。いつもより会話が進展している。
「おっぱいよ。おっぱい。生理食塩水かシリコンいれようかって」
「ええ? いいじゃない、もう結婚してるし」
「おっぱいプルンとさせたいもの。温泉とかで、おばちゃんの裸みるとさ。しわしわなのに、おっぱいだけプリンとしてる人、いるじゃない?」
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