1

2/3
30人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「もう……うちなんて、全然言ってくれなくて……」 彼女が口火を切った。 「ええ?そうなの?」  わたしは驚いたふりをした。だってこうしたとき、なんてコメントしていいかわからないから。 「私、もう40歳になるの。女でいられるのはあと10年よ」 「はあ」  わたしはもう45歳だけどねとは言わなかった。 「このまま朽ちて行くわけ? 私たち」 「そうねえ……」  わたしはお茶を飲んだ。  わたしも含まれているのかと心の中で突っ込む。  確かに45歳だし、皺も、白髪もありますが、夫婦お互い様なのではとおもう。しかし、黙っていた。  お茶が冷めちゃう。  わたしは茶碗を両手で持った。  一人ではお茶も飲もうとも思わないけど、お客が来るとお茶を入れようと思うから、そういう点ではいいのかもしれない。  でも、同じ人が毎日だと正直話すこともないし、少々辟易している。 「このまま終わるなんて嫌よ」  そういうと彼女は長いまつげをバサバサとまばたきしてみせる。  ずいぶん長いまつげだ。  わたしの視線に気が付いて、彼女は笑った。 「ツケマよ。エクステンションしたの」 「いいね。素敵よ」  わたしはとりあえず褒めておいた。 「それでね、私、整形しようと思うの」 「ええ!」  私は驚いた。いつもより会話が進展している。 「おっぱいよ。おっぱい。生理食塩水かシリコンいれようかって」 「ええ? いいじゃない、もう結婚してるし」 「おっぱいプルンとさせたいもの。温泉とかで、おばちゃんの裸みるとさ。しわしわなのに、おっぱいだけプリンとしてる人、いるじゃない?」     
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!