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「ああ」
私はそんな人いたっけと思いながら、相槌を打つ。
「ああいうのがいいな。年取ってからも、女なの。おっぱいプルンがいいわ。今なんて授乳が終わって、胸がこそげ落ちて、位置が下がって……」
「まあ、そうだけど」
わたしは自分の裸を思い浮かべ、苦笑した。服の上からそっと胸の位置を触ってみる。
わたしの様子を見て、隣の奥さんはふふふと笑った。
「若いころに戻っておっぱいプルンよ。恋がしたいのよ……ギュッと抱きしめてほしいのよ」
隣の奥さんは「はあ」とため息をついた。
「アイドルとか韓流とかは?」
「もう試したわよ、ふふふ。無理ね。生身じゃないもの」
「いちおう地球上には存在するじゃない?」
「抱きしめてはくれないわよ」
隣の奥さんはぼんやりと窓の外を見る。
遠くのほうでピンク色をした桜の木が何本か見える。
「暖かくなって桜は満開ね」
私がそういうと
「あっという間に散っちゃうわね……」
奥さんは冷たく言い放った。
テーブルの上に置いた隣の奥さんの手はちゃんと手入れされていた。しっとりとした肌に艶々としてピンク色した爪。
私はなんとなく隣の奥さんには似合わないような気がした。
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