君の助手席で

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「俺はこのままがいい」 「え?」 「俺、この席が好きなんだよ」  そう言った優斗の横顔は、なんだかいつもと違う。見慣れたはずのその横顔が、なぜだか寂しそうに見えて、胸がドキドキしてきた。 「あ、あのぉ……優斗?」  どうしたらいいのかわからなくなって、恐る恐るその名前を呼んでみる。  するとうつむいていた顏を上げ、優斗が私に振り向いた。 「だってここなら、授業中わからない問題、杏奈に教えてもらえるし、テスト前にはノート写させてもらえるし」 「ちょっ、あんたねー」  私の声に優斗が笑った。いつもみたいに、楽しそうに。  なんだ。へんな想像しちゃって、バカみたい、私。  もしかしたら優斗は私のことを……だなんて。  そしてそれをちょっとだけ期待していた自分に気がつく。  やがて私たちは遠く離れた席になり、その後も会えば冗談を言い合ったりしていたけれど――結局ただの友達のまま、高校を卒業した。
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