君の助手席で

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「しょうがない。タイヤ交換すっか」 「え? で、できないよ、そんなの」 「俺がやる」 「へ?」  呆然と突っ立っている私を残し、優斗は車のトランクを開け、中をのぞきこんだ。 「スペアタイヤも工具もあるし、なんとかなるだろ」 「なんとかって……あんた免許も持ってないのに、できるわけないじゃん」 「俺、免許は持ってないけど、自動車整備工場の息子だから。親父の跡継げるように、昔っからいろいろ仕込まれてさ。結局全然関係ない事務職に就職したけど」  慣れた様子で軍手をはめて、工具を取り出しながら、優斗がにかっと笑う。 「うそぉ……」 「はい、邪魔だからどいてどいて。濡れるから車乗ってろよ」  乗ってろって言われても、乗れるわけないよ。  手際の良い感じで作業を始めた優斗の背中が濡れていく。何も手伝えない上、傘も持っていなかったことに気がつき、また涙が出そうになった。
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