君の助手席で

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 雨の中、恐る恐る車を走らせる。 「そんなにビビんなくても大丈夫だって。家まではちゃんと走れるから」 「う、うん」  ハンドルをぎゅっと握りしめ、前を見つめたまま私は言う。 「優斗がいてくれて、ホントによかった」 「まぁ、これくらいはね。いつも乗せてもらってるし」  よく考えたらそれもそうだ。私の方が絶対、優斗に尽くしてるはず。  そんなことを思っていたら、フロントガラスに当たる雨が止んだ。 「げ、雨止んだ?」 「なにもあんな大雨の中、作業する必要なかったってこと?」 「マジかー」  優斗がシートにもたれて、私の貸したタオルを頭からかぶる。  雨でくすんでいた視界が、次第に開けていく。  こんなふうにずっと走っていくのも、いいかもしれないな。  隣に優斗がいれば、何も怖がることはない。
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