君の助手席で

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 優斗と知り合ったのは、高校三年生の春。  それまで私は優斗のことを知らなくて、たまたま同じクラスになって、たまたま隣の席になった。  初対面だというのに、照れる様子もなく私に話しかけてきた優斗。  そんな優斗と話すのはけっこう楽しかったから、私たちはすぐに冗談を言い合える仲になった。 「杏奈って優斗と仲いいよねぇ?」 「え、そうかな?」 「付き合ってるの?」 「げ、まさかー!」  そう言って友達と笑い合う。  確かに優斗とは、クラスの男子の誰よりも仲がよかったけれど、私たちはそんな仲じゃない。  だって優斗はいつも冗談ばかり言っていて、そんな雰囲気になったことなんて一度もないもの。  やがて高校生活が残り半年くらいになった時、ある日突然席替えをすることになった。 「よかったー。これでやっと、あんたと離れられるわ」  荷物をまとめながら、隣に座る優斗に言う。だけど優斗はいつものように言い返してこない。  あれ? と思った私に、優斗がぼそっとつぶやいた。
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