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運転する感覚が、いつもとどこか違うと感じ始めたのは、高速を降り国道を走り出してからだった。
カーナビから流れる音楽とは違う音。ハンドルも重い感じがする。だけどそれがなんだかわからなくて、私はそのまま走り続けた。
やがて国道から脇道へ入った頃、窓の外も変わり始めた。
「あれ? 雨?」
フロントガラスにぽつりぽつりと落ちてきた雨粒は、あっという間に激しくなった。
「マジかー? 今日雨降るって言ってたっけ? まぁ、杏奈に家の前まで送ってもらうからいいけど」
「優斗。あんたねー」
私の隣でシートにもたれて、のん気にそんなことを言っている優斗をちらりと見る。
華やかなビルの夜景も、オレンジ色に続く照明も、キラキラ光る対向車のヘッドライトも、いつの間にか見当たらなくなり、あたりは静かな住宅街だ。
やがてその住宅も減っていき、周りにはのどかな畑が広がる。
市街地から一時間もしないうちに、景色はがらりと変わってしまうのだ。
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