君の助手席で

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「杏奈。これってさ」  まだドキドキしている心臓を押さえていると、隣の優斗が言った。 「もしかしてパンク?」 「えー、うそぉ」 「うそじゃねぇって」  車から降りた優斗の後に続いて、雨の降る中、助手席側の前輪を見る。タイヤは見事にぺしゃんこだ。 「お前、よく今まで気づかずに運転してたな」 「ちょ、ちょっとおかしいとは思ってたけど……でも、優斗だって気づかなかったじゃん?」 「俺だって、ちょっとはおかしいと思ってたけど」  しゃがみ込み、暗闇の中でタイヤを眺めながら、ため息をつく優斗。それを見ていたら、どうしようもなく泣きたくなった。  どうしよう。どうしよう。こんな時、どうしたらいいんだっけ?  こんなことなら、もっと車のこと勉強しておくんだった。  おろおろと、パニックになっている私の隣で、優斗の声が聞こえた。
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