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午前〇時も近い。夜が更けていく。そんな時間。
部屋でSNSを眺めていたら、絵梨奈さんの投稿があった。たった今更新されたもの。私が持ってきたカラフルなスムージーを並べた写真だ。それに添えられた言葉は「幼馴染ちゃんからお祝いにいただきました」
もどかしくなぞった。
その時、玄関のチャイムが鳴り響いた。
「やぁ」
家の前で片手を上げて、軽々しく挨拶をする安西先輩。
私はドアを大きく広げて、彼が入ってすぐに閉めた。いつものワイシャツとネクタイではなく、緩めの部屋着姿。
「なんて言って出てきたんですか」
咎めるように言うと、彼はいたずらに笑った。玄関を我が物顔で踏んで。手には、新品の革財布を持って。
「コンビニに行ってくるよって。まだまだ記念日は終わらないからね。酒が足りなくなったから」
悠々と部屋に入り込む彼。私はその後ろを睨む。視線を背中に刺せば、彼は眉を頼りなく下げて微笑んだ。そして、私の耳に甘く息を吹きかける。
「冗談だよ。千夏に会いたかったんだ」
ワインの香り。赤。赤い匂いが脳へだるさを運んでくる――
健康的で柔らかい、キメの細かい肌。
左右対称の、大きすぎず小さすぎない、アーモンド型の目。
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