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上条梓。二十五歳。独身。でも、交際五年の彼氏がいる。彼女は高尾芽依子のように簡単には騙されてくれないだろう。
情報によれば、彼女も徹底して不倫の証拠を掴まれないようにしているらしい。ガードの固い女。先輩も口説くのに苦労したらしい。いや、そんなことはどうでもいいけれど。
上条梓の肌はクレーターのない滑らかさ。まるで、ミルクのような。そんなとろみのある白肌にはあまり色をつけていない。自慢げに。
「え? 下地だけでこんなに綺麗になるの? 嘘だぁ、そんなことないでしょー。もっといろいろ使ってるんでしょ?」
昼休み、食堂で上条梓と同席になり、私は彼女の肌を褒めそやした。他に褒めるところといえば、爪か。ピカピカに手入れが施された爪はトップコートを塗っただけだとか。ピンク色のかわいいしずく型の爪を同様に褒めると、彼女は上機嫌に笑った。「そんなことないですよー」と、それこそトップコートみたいな嘘でコーティングした返事をしながら。
この手で安西先輩に触れて、この肌で安西先輩に密着して、何度体を重ねてきたんだろう。そんなことをちらりと頭の隅で考える。
「彼氏もいいよねぇ。こんなにかわいい彼女がいるんだから」
ここで上条梓の良心をチェックしてみよう。
「どうでしょうね。最近、まったくかまってくれなくて」
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