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彼女は平然と言った。何のよどみもなく。
「付き合って五年、だっけ? ちょっとマンネリしちゃう時期かもね。でも、結婚とか考えてるんじゃないの? 同棲してるならなおさら」
「まぁ、そうなんですけどぉ。でも、彼の収入じゃちょっと不安ですし。それに結婚だけがすべてじゃないですよ。今の時代、結婚って形に縛られない恋愛もあるんです」
「そっかぁ。それじゃあ、夜とかどうしてるの? 退屈なんじゃない?」
私も多分、苛立っていたんだろう。冷静にしているのが少し億劫だ。
この問いに、彼女は白肌を赤く染めた。恥ずかしいと言わんばかりに。
「ちょっと、やだ。先輩、お昼休みですよー? そういう話は」
「でもこの時間しか聞けないじゃん」
「そうですけどぉ」
彼女はレタスとミニトマトをフォークで一気に刺した。それを小さな口に押し込む。もぐもぐ、という効果音が似合いそう。
こくんと喉へ送り、彼女は考えながら緑茶を口に含む。そして、一息ついた。
「教えてくれないの?」
催促する。上条梓はもったいぶるように「うーん」と唸った。
「あ、もしかして、誰か別の人とやってたりして」
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